21 Years Old Virgin 2


「いやだからそこまで身構えられても」
 うつぶせに寝かせて、ローションをたらすとまたあからさまに赤崎が緊張する。うつぶせがまずかったのか、それともローションが初体験での緊張なのかは分からない。
 何となく後者な気がする。
 俺ならベッドで知らないもの出されたら、基本的には興奮しちゃうけどなー。いずれにせよこんな簡単に再度緊張されるあたり、俺あんまり信用されてないのかもしれない。
「さっさとやったらどうスか」
 だからお前、それ具体的にどうか分かってないだろ。
 人の逡巡を知らずに赤崎は相変わらずだ。やっと少し緊張もほぐれていい反応を返すようになっていたのに、ちょっと違うことすると大げさに震えるし、そのくせへらず口ばかり叩く。あーもーホント、可愛い後輩だこと。
「しまいにゃほんとにさっさとやるぞ」
「したらいいじゃないスか」
 お前、みてろよ。
 あんまり可愛くないので少し驚かせてやることにする。
 周りに塗り付けていたローションの助けを借りて丹波は、まだ直接触れていなかった中に人さし指を突っ込んだ。指一本だけなのでそれはさして苦労もなくするりと入り込む。と、同時に赤崎の股のあたりに可哀想なくらい緊張が走った。
 口ほどにもないやつめと、分かりやすい反応に丹波の口が緩む。
「あーもー、ここまでやってしねぇよ」
 今のはただの指だし。
 俺のそんなにデカくないけどさすがにこんなに小さくも短くもないし。で、指いれただけでこんなにガチガチになる相手にいきなり突っ込むような無体を働くくらいなら、はじめからお前のことをこんな風に丁寧に扱ってないし。
「何も言ってないスよ、俺」
「可愛くねえなあ」
 相変わらずの憎まれ口に、そこが可愛いんだけどと言いかけて、丹波は自分で自分に驚いた。
 いやいやいや、俺はそんな趣味はなかったはずだ。どんな趣味か分からないが。
 さっき勢いで入れた指をそろそろと前後に動かしてみる。
 やはり指の1本くらいなら大丈夫なんだろう。得体が知れてかえって安心したのか、入れたばかりの時よりは赤崎も少しマシなようだ。差し込んだ指を抜けないようにギリギリまで引き出してローションを垂らす。それをまた根元まで押し込んで、ゆっくりピストンしながら少しずつ中にローションを押し込んでいく。出し入れする度に入り口がひくひくしながら締め付けてくるので、指を根元まで押し込んでから、親指でぐりっと強めに押すように撫でてやった。
「ひゃっ」
「……ぶは。なんだそれ」
「びっくりしただッけ…ス…よっ! あ……っ、やっ」
 思ったよりも大丈夫そうだったので、しゃべって油断しているところに指をもう1本足すと赤崎が短く悲鳴のような声をあけた。
 あ、やばい、今のちょっとキた。
「死にゃーしねえし、大丈夫だっつの」
 余裕だったはずが何だかこちらの息まで荒くなる。
 入れた指2本でぐいと左右にアナルを押し開くと、一気にローションを流し込む。
 誤摩化すように首筋を舐めた。
 痕が残るほどは強くないが、少しキツめに吸い付いて、離れがてらにまた吸った肌を舐める。顔を上げた赤崎に本日何度目かのキスをする。舌を絡めて、誘導して、口の中に入っていた舌を軽く噛んでやると、びくりと体が跳ねた。
「気持ちわるい」
 赤崎が睨んできた。
 半泣きなので、すごんでも何ともないというかむしろエロいだけだし、そもそも恥ずかしいだけだろうから相手にしない。何しろ、赤崎の下半身ときたら一気に水気が増えたせいか、ぐちゃぐちゃと今までよりも盛大にやらしい音が響かせている。それに居たたまれないのだろう。
「あーハイハイ」
 適当に不適切な相づちを打って、行為を続行する。爪はいつも短いので引っ掛けることもないだろうが、それでも出来るだけ指の腹をつかって、肉壁にこすりつけるように広げていく。
 何度も何度もそうしていると、少しずつ指を動かすスペースにもゆとりが出てくる。
「さっさとやったらどうですか」
 しばらくそうしていると、赤崎が泣き言を言った。
 目に涙をいっぱいに溜めて、丹波を睨んで、それからすぐに、ぎゅっと目を閉じる。
 多分、見たくなかったんだろう。
 ああ、まぁ、自分の尻に指が突っ込まれてる姿とかあんまり見たくはないよなと丹波は思った。
「あのなー、わざわざならしてやってんだぞ、こっちは」
 わかんないけど、尻から流血とかやだし。
 俺、痛がってるのみて喜ぶ趣味とかないし。
 第一、そんなことになってお前のトラウマにでもなったら俺さすがにちょっとどうしていいのか分からないし。
 で、こんな考えホントおっさんみたいで嫌だけど、でも二十歳そこそこなんてまだそういうセックスでの失敗みたいの引きずっちゃう年だしとか、つか大体、何でお前のことなのに俺の方がこんなに色々考えてるんだとイラっとしたら、不覚にも変にムラムラしてきてしまった。
「あッ」
 少し早いピッチで指を抜き差ししたら赤崎がまた声を上げた。
 ぶるぶる震えてる癖に、しっかり感じているらしい。
 振り向いてこっちを見る目は涙で濡れて、口は情けなく緩んでいる。若葉マークもいいとこなので、そんな真似ができるとも思わないが、まるで誘っているようだ。
 お前が煽ってきたりするのが悪い、うん。
「もー、いーや。入れっぞ」
 丹波は言いながら指を引き抜く。
 自分で自分のペニスを手早くしごいて固くすると、手早くコンドームを付ける。それから体をひねってこちらをみた赤崎の体をもとのうつぶせになるようにそっと寝かせる。ついでになだめるように何度か体をさする。
 少し乱暴な言葉とは裏腹に手つきは丁寧だ。
「息つめんなよ」
 赤崎の腰を自分のいい位置に合わせるように抱えて、さっきまでほぐしていた場所に自分のペニスをあてがう。
 赤崎は枕に思いっきり顔を伏せている。まるで刑の執行を待つみたいに。
 ちょっと傷つくなぁと思ったが、大人しくしてるみたいなので気にせずに続けることする。ずれないように慎重に位置を合わせる。溝にひっかけるみたいにして先端を、ほんの少し入れただけで体がまた派手に震えたが、ゆっくり入れるとかえって辛いので、ぐいと一気に根元までねじこんだ。
「ひ。うあ……」
 赤崎はまた全身を震わせる。
 それが可哀想やら、改めて男だけどバージン喰いしちゃったという感慨めいたものを起こさせるやら、もっと直接的には振動が中まで伝わって気持ちいいやらで、色々なものがないまぜになって変な感じに丹波を酔わせる。
「あ…はぁ」
 いい加減、我慢も限界なので、このまま動いてしまいたいが、さすがにいきなり動いたらまずいよなーと、ひとまず体が慣れるまで動かないことにして、するりと前に手を回すと、何度か足の付け根を撫でて、それから赤崎のべたべたになったままのペニスを握る。まだ萎んではいないが固さを失ったそれをきつめにしごく。
 赤崎が嫌がるようにかぶりを振った。
「なにボーっとしてんスか、早く」
「何おまえ、初めてなのに後ろの方が好きなの?」
 からかうように言葉をかけながら、丹波としても願ったりかなったりだったので腰を動かした。
 あんまりなお誘いに、不覚にも逆に興奮してしまって、つい思ったよりも強めに突いてしまった。
「!? そんなんじゃな…ッ」
「あーハイハイ」
 そんで、今のはやっぱり強すぎたわけね。奥を突いた瞬間に赤崎が肩を震わせたのを見て取って丹波は微調整することにする。今度はあまり急にならないように気をつけながらピストンする。
 散々塗り込んだローションが丹波のものが途中まで抜かれるのに合わせてこぼれ出る。
 あ、やばい。気持ちいい。
 赤崎の中は思ったよりも具合が良くて丹波はぎくりとした。
 正直、動き始めてしまうと相手にする気配りなんてものは散漫になりがちで、自分本位に動いてしまいそうになる。ともすれば相手を忘れて動いてしまいそうなのを意識して抑えた。なるべく赤崎の様子をうかがいながら少しずつ動きを強めていく。
 こんなに慣れてない相手は久しぶりすぎて感じ掴めねえなぁと、動きを緩めて震える背中に何度かキスを落とす。
 ゆるゆると動くだけだったが、それでもどちらかというと丹波は激しく動くタイプでもなかったし、赤崎がブルブル震えているのが、中に入れている丹波にまで伝わってくるので、それだけで充分イケそうだった。
「も、いやス」
 前を弄りながら、ゆるゆるピストンしていると、赤崎が根をあげる。前回のことで、赤崎の「やだ」は「もう出る」だと分かってるので、あーハイハイと動くのをやめて、腰を支えていた手も増やして、両手でしごいてやる。
「やだ…ッ、いやだ」
 言いながら、赤崎が手の中で果てた。
 どくどくとまだ脈打つペニスを指でかるく拭ってやると、どうせもうドロドロで今更なのでシーツになすりつけた。
「もうちょっと付き合えよ」
 赤崎の耳にそう落とし込むと、うつぶせて隠してしまっている顔の代わりに、首やら肩やらの剥き出しの部分にキスをして、それから動くのを再開させる。赤崎が鼻にかかる声を小さく漏らすのを聞きながら、腰を動かした。
 引き抜く時に、抜くなら抜くっていってくれとか何とか色気のない文句を言った以外、赤崎はさして否定めいたことは言わなかった。引き抜いたあとゴムを外し、何度か自分の手でしごいて、うつぶせのままの赤崎の背中のあたりにぶちまけた。イった後に体使われることよりも、イカされる方が嫌ってどういうことだよと思うと、その天の邪鬼ぶりが可愛かった。
 ああ、やべえ、一発出したらどうでも良くなる思ったのに、まだ可愛いとか思ってるよ、俺。おかしいんじゃないのか。
 汗をかいた額を手の甲で雑に拭って、ベッドサイドのティッシュで赤崎の背中に飛ばした残滓を拭う。
 ティッシュを掴む時に同じベッドサイドにある時計に目がいった。ちらりと文字盤をみると、意識していたよりもかなりとんでもなく時間が経っている。
 赤崎は案の定というか、ぐったりしている。
「赤崎、おい、お前大丈夫か」
 もしかして優しくしたつもりが、却って時間がかかってキツかったんじゃないかと心配になって声をかける。
「……なんスか、ソレ」
 心底だるそうにだったが、すぐに返事が返って来たので、やっと安心して、へたりと赤崎の横に体を横たえた。
 出したばかりなのでまだ息が整わない。
 安心したせいか、何かいきなり、えらいこと疲れた。
 赤崎はすぐに顔だけこちらに向けてきたが、真っ赤だ。顔も涙やら何やらでぐしゃぐしゃ。お前ねだからその顔で憎まれ口叩いても無駄だって。面倒だったので、髪の毛を乱暴に撫でて、とりあえず気持ちいい疲労感に浸るために目を閉じた。
 赤崎が、年なんじゃないスかとか生意気いってるけどまぁいいや。どうせ俺のこれはすぐ収まるけど、体ダルいまんまで一泡吹くのお前の方だし。つか、実際どうせ動けないんだろ、そのまま大人しく転がってるってことは。
 とりあえず、この後始末はどうしようかなぁと思いながら、真っ赤な顔をしたままの赤崎のとがらせた唇にひとつ、触れるだけのキスを落とした。

 落ち着いてから、喉が乾いたのでペットボトルを出しに立ったら、よれよれの赤崎に「何で元気なんスか丹波さんのくせに!」と生意気なことを言われたので、とりあえず頭を豪快にはたいてやった。
 あーもー、お前やっぱ可愛くない。

 

姑息にも加筆。これで最終稿だと思います。多分。